東京高等裁判所 昭和27年(う)3703号 判決
〔抄 録〕
控訴趣意第一点について。
しかし、本件自動車事故現場附近の制限速度が時速二十哩であり、且つ被告人が、本件自動車事故の際右現場附近を走行した速度が右制限速度以内であつたとしても、右現場附近は原審及び当審の各検証調書によつて明らかなように、道巾も左程広くない上に、S字型に彎曲しており、しかもその一方は断崖で、なお右断崖寄りには多少の崖崩れがあり、又その反対側の道端附近には相当大きな陥没がある相当危険な道路であり、且つ被告人は、このことを、本件自動車事故の直前にも、反対の方向から本件自動車で通過して十分に知つていたのであるから、被告人が、原判示のように、右前照燈が故障して点燈しないため、多少とも前方照明が不十分な本件自動車を運転して、右現場附近を通過するに当つては、相当に減速して、前方の道路状況を十分に確かめて進行し、万一自動車が道路を踏み外しそうな危険に際した場合には、直ちに停車して乗客の安全を保持すべき業務上の注意義務のあることは条理上当然である。そして、原判示事実は、原判決が挙示引用した証拠によつて、被告人が右のような自動車運転者としての業務上必要な注意義務を怠つた点を含めて、十分にこれを肯認することができ、本件訴訟記録並びに原裁判所及び当裁判所が取り調べた証拠を精査しても、原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認の疑はないから、論旨は理由がない。